シナリオ背景
 
 
 
シナリオ本文では明らかにされない、事件の背景説明です。
「シナリオストーリーライン」中の「情報項目」と合わせてご覧ください。
PLに求められた場合、GMはこの背景の中から話をすると良いでしょう。



▼恭太の話


母親の不倫により産まれた神原恭太は、両親、特に父親に虐待を受けていました。
愛情を受けずに育った幼少期の彼は、自らがこのような境遇に陥った原因である「本当の父親」を憎み、
復讐のため探し当てました。
しかし、そこで出会った腹違いの弟も虐待を受けており、価値観の崩壊を起こしている状態でした。
恭太はその弟に深い哀しみを覚え、自らを不幸と思うことさえ出来なくなってしまいます。
その後恭太は両親に殺害されてしまいました。


殺害され覚醒した恭太はUGNに拾われ、チルドレン教官である御島夏苗の庇護のもと生活します。
しかし恭太は人々の加虐衝動を活性化させる能力を持っていました。
その能力は、日常と非日常、正気と狂気、色んなものの境界を曖昧にしてしまう能力であったため、
“境界線”と名付けられます。
“境界線”はレネゲイドを活性化させて衝動を煽る能力のため、恭太はUGNにいられなくなりました。

恭太は強い再生能力を持っていたため、殺害処分を行うことも出来ませんでした。
夏苗は恭太をFHに実験体として引き渡すことにより“境界線”を日常から遠ざけました。
夏苗はそのことを強く後悔しており、その出来事より後、彼女は“哀しみの王”と呼ばれるようになりました。
『救われない存在に救済を』という彼女の理念は、恭太への贖罪が強く含まれています。


元々両親にもUGNチルドレン達にも虐待を受けていた恭太でしたが、
FHが彼に行った非道は言葉では到底言い表すことが出来ません。
『想像し得るあらゆる凄惨な出来事』が恭太の身に降りかかりました。
肉体の半分を機械化する、という改造が彼に施された結果であり、それは一般人の肉体には到底及ぼせないものです。

しかし恭太はその結果、“境界線”の能力を失います。


その後そのFHセルは崩壊し、恭太はFHからも“境界線”からも開放され、晴れて自由の身となりました。
フリーターとして気ままな生活をしていた恭太は、昔出会った腹違いの弟のことを思い出します。

腹違いの弟も、自分と同じく虐待されていた。
そのことを思い出した恭太は、その腹違いの弟、耕介のことを調査しました。
調査の結果、耕介は未だに虐待を受けていること、それのみならず自分と同じ“境界線”の能力を
持っていることが分かりました。
恭太は耕介を救おうと考えます。自らと同じ境遇の人間をこれ以上増やしたくない、彼はそう願いました。
“境界線”の起こす衝動に飲まれないよう意志を鍛え、また自らの再生能力を活かし内臓の売却などを行って
金銭を確保した上で、恭太は耕介を両親の元からさらい、自らの手元に置きました。
この際、知り合って仲の良くなったPC2に、心情を吐露しています。


恭太は夏苗と再会し、“境界線”をどうすることも出来ず強く悔いていた彼女と協力することに成功します。
彼ら二人の研究は耕介の“境界線”を封印する方法まで突き止めます。
それは耕介の半身も機械化する、というもの。
しかし耕介は“境界線”の能力以外は一般人。覚醒していない彼に手術を行うことは出来ませんでした。
そこで恭太と夏苗の二人は、耕介のジャーム化を防ぐために、侵蝕率を抑える措置を施します。
チョーカーを侵蝕率タンクとし、侵蝕率上昇を防ぐ、というものです。
耕介がロイスを獲得し、ジャーム化せず覚醒出来る。そんな日を彼らは待っていました。
しかし、耕介の“境界線”は意図せず恭太のものより強力なものになってしまいます。

恭太は加虐衝動から耕介を傷つけてしまうことを恐れ、暴走をタイタス昇華で解除していました。
そのうち恭太の侵蝕率、ロイスは日常に戻れないところまで達してしまいます。
耕介のロイス取得条件が「肉体関係を結ぶこと」であることを突き止めた恭太は、
兄弟でありながら耕介と肉体関係を結ぶことを決意します。
しかし恭太にとってその行為は物凄く負担の大きいものでした。
そして、とうとう恭太はジャームとなってしまいます。


ジャームとなった恭太は自傷衝動に飲まれ、自傷行為を繰り返します。
しかし「耕介を救いたい」という思いは残り、妄執にまで変化し、死ぬことさえ出来なくなってしまいました。

想像し得るあらゆる凄惨な出来事を経験し、肉体的な苦痛に非常な耐性を持つ恭太。
そんな彼に、レネゲイドはひとつの方向性を持たせます。
それは「大切な人を傷つけることで自らの心を傷つける」と言ったもの。

手始めに彼は最も救いたかった耕介を傷つけるため、耕介の両親を呼び寄せます。
父親の両手足を切り落とし、母親は洗脳し、耕介の価値観を更に狂わせます。
父親の両手足を切り落とし顔を切り刻んだのは、「本当の父親」への復讐も含みます。
また、自らが管理していた“境界線”の情報を廃棄し、耕介が助かってしまわないよう動きます。

次に彼は自身の両親を殺します。覚醒するほどに求めていた両親からの愛を断ち切るためです。
二度と手に入らなくなった愛を求め苦しむことで、彼の自傷衝動はひとまずの満足を覚えます。

しばらくして恭太は、夏苗が“境界線”の情報を保管していることに思い当たります。
耕介が助かる術を握り潰すため、恭太は夏苗の命を狙いました。
夏苗を殺害し、彼女が自らの頭部に保管していた情報を頭部ごと持ち帰り、
“境界線”が何だったのかさえ分からないレベルにまで情報を握り潰しました。
耕介が助かるための大事な情報を手元に置き、それでいてそれを使わないことで、
彼の自傷衝動はまたひとつの満足を覚えました。


そして今、耕介の「食事会を開きたい」というその願いを利用しようと思いつきます。
耕介の“境界線”をPC2始め自らの大事な人達にぶつけよう、という思惑。
PC達を呼び寄せて、そしてシナリオ本編へと移行していきます。




▼耕介の話


耕介は母親からネグレクトと暴力、また精神的な虐待を日常的に受けていました。
父親は耕介のことを大事にしていましたが、それは耕介への性的虐待へと発展してしまいます。
ネグレクトが長い間続いた結果、耕介は暴力等の直接的な虐待行為を親からの愛情と勘違いして育ちました。
性的虐待に至っては、それを行わなければ愛されない、とさえ思い込んでしまいます。
父親との行為を母親に目撃された時など、母親に首を絞められ瀕死になることさえありました。
そのような環境下で中学生時分まで育ったため、耕介の価値観は著しく狂ってしまいました。

そこに、かつて出会った腹違いの兄である恭太が現れます。
1度会ったきりの存在でしたが、父親によく似た姿をしていたため、敵意無く彼を受け入れました。
耕介は恭太に拉致され、外部から隔離されます。触れる人間が恭太に限定されたことで、
耕介は今までの生活から脱却し、恭太を盲信する生活を送ることとなります。
基本的な教育など、今まで受けることのなかった必要最低限のことを、恭太から吸収していきます。

しかし、恭太に耕介の価値観を大きく変えるまでの力はありませんでした。恭太もまた虐待経験により
近い価値観を持っていたため、価値観を変えることが出来なかったのです。


同居して以来、どんなに望んでも兄である恭太は性行為を行ってくれませんでした。
耕介にとっては唯一の拠り所が封じられた状態です。
代わりに、兄弟の約束として「お守り」を貰うこととなりました。
アクセサリーであれば形は何でも良い、と恭太から言われ、耕介は「首輪」を望みます。
自分を連れ去るときに恭太がそのようなチョーカーをつけていたからです。
首輪で同一感と被支配欲を満たすことで、耕介は兄弟の繋がりを意識します。

それでも、やはり兄と肉体関係が無いことは、大きな不安となっていました。
それから生まれるストレスは、教えられた勉学や料理に向けていました。
そのため、表面だけ見ればきちんと学習を受けた学生のように繕うことが出来たのです。


オーヴァードになるため、ひいては“境界線”を封印するために、
恭太から「友人を作れ」(=ロイスを作れ)と望まれた耕介。
耕介は友人を作るために、学校に行きたいと望みます。
両親と暮らしていた時に窓から見えていた、ランドセルを背負ったり制服を着ていたりした人々。
耕介には彼らへの憧れがありました。

沢山の人の中に入るには“境界線”は危険極まりないものでしたが、耕介の年代にとって学校とは日常の象徴。
それに、もしかしたら、たとえ暴力が切欠でも友人が出来るかもしれない。
そのような考えを恭太は持ち、耕介が学校に通うことを許可しました。


耕介は“境界線”の力を持っています。
その所為で耕介は色々なところで虐待を受けてしまいます。
学校ではそれが切欠で、“境界線”無くとも慢性的ないじめに遭ってしまいます。
しかし耕介はそれが「いじめ」だと認識出来ません。ただ「構ってくれる」と好意的に受け止めます。
いじめが性暴力に発展しても、耕介にはそれが異常なことだとは気付きもしませんでした。

ある時耕介は、暴力によるコミュニケーションを必要としない存在であるPC1に出会います。
耕介の認識に綻びが出来ます。暴力を必要としない存在、それは耕介にとって兄以来の存在でした。
耕介はPC1に興味を持ち、「友人を作る」ということを強く意識し始めます。

ただ、耕介には「友人」がどのようなものなのか分かりません。
どのように関わっても、お互いを知れた気になれません。本当に心を開いたと感じられません。
それは、今まで親と大事にしてきた関係、肉体関係が無いせいだと結論されます。
しかし、性的なことは他者と行ってはいけない、そう恭太に強く強く言い含められていたため、
PC1にそれを求めることが出来ませんでした。
手を合わせることさえタブーだと感じながら、PC1との関係を模索していきます。


あるとき、恭太がとうとう性行為を行うことを許可します。
兄との行為は今まで経験してきた中で最も穏やかで優しく、耕介はそれに強い安心感を抱きました。
ようやっと安心出来たことで、耕介の恭太への盲信は深まります。


そのうち、恭太が両親を連れてきます。
再会した母親は、今までとは打って変わって静かで、耕介を責めることがありませんでした。
怒らない。無視しない。自分の望むこともしてくれる。耕介は母親と「仲直り出来た」と考えます。
父親の両手足を切り落とすことに関しては、初めは当然よくないことだと感じましたが、
恭太が「パパがいなくならないようには必要なこと」だと言われ、丸め込まれてしまいます。
盲信はもとより、価値観と存在理由の中心に父親の存在があるため、もう父親と離れたくないと感じたからです。

恭太の部屋から漂う異臭も、「兄が何かしている」程度に捉え、慣れていってしまいます。
恭太の行動すべて、違和感を覚えながらもそれがおかしいことだとまでは思えませんでした。


しかし、両親を連れて来て以来、恭太がひどく衰弱していっていることに気付きます。
食事も睡眠もろくに取れず、コミュニケーションも上手くいきません。
耕介がどれだけ料理の腕を振るっても、夜決まった時間にベッドに入るよう促しても、
疲れ果てて眠ってしまいそうなくらいに性行為に頼っても、どれも上手く行きません。
自ら行える行為では、恭太の衰弱を止めることが出来ませんでした。

そこで耕介は、恭太が友人として話していたPC2のことに思い当たります。
PC2であるならば、恭太の衰弱を少しでも止めることが出来るかもしれない。
そう考え、PC2と再会することを恭太に提案します。
また、懇意にしているPC3やPC1を招待することで、食事会にしようとも提案します。
人数が多いほうが楽しめるだろう、との考えです。

その提案は受け入れられ、3人に連絡を入れ、そしてシナリオへと移行していきます。




▼“境界線”の話


“境界線”は、恭太、耕介らの持つ美貌等の肉体的素質がD【触媒】の能力を活性化させたもの。
虐待を受けて育った彼らは加虐を愛情と見なし、それを求めることで生き延びてきました。
レネゲイドはそれを汲み、周囲に加虐衝動をばらまく能力を彼らに与えました。

恭太に保護された当初、耕介の“境界線”はそこまで強力なものではありませんでした。
しかし皮肉なことに、保護され暴力から隔離されたことで耕介の“境界線”は強く暴力を求めてしまいます。
その結果、耕介の“境界線”は意志を非常に強く鍛えていた恭太でさえも抗えぬ衝動を植え付ける
強力なものとなってしまいました。

“境界線”は、肉体を触媒として発現するもの。
そのため、大きな肉体損壊があれば封印することが可能です。
恭太は「半身を機械化される」という大きな肉体損壊を受けたため、“境界線”を捨てることが出来たのです。








 
 
 
もどる