月 日 ママとパパが今日もケンカしている。 ぼくが間に入ると、ママがぼくを叩いて満足する。 そうしないと、ママとパパはいつまでもケンカしている。 ケンカの叫び声は聞きたくない。だから今日も叩かれに行った。 月 日 料理を覚えた。ママが居ない日なら、パパが許してくれる。 包丁で材料を切っていくのは、何だかとても楽しい。 フライパンを振るうのも、疲れるけど楽しい。 もっと料理したいな。 月 日 料理を食べてくれる人がいるのは嬉しい。 ママは食べずにゴミに捨ててしまった。悲しい。 ママに料理を出すのはやめよう、と思った。 月 日 今日もケンカの声がうるさい。 これからまたママに叩かれに行こうと思う。 あとでパパにもだっこされに行かなきゃ。 月 日 女神様のおとぎ話。昔パパが教えてくれたやつ。 ケンカ両成敗で、家に調和をもたらしてくれるって話。 女神様がいてくれたら、ママもパパもこんなにケンカしないのかな。 いたらいいのになー女神様。 月 日 ぼくは虐待を受けているんだそうだ。 特に、パパのほうがぼくにひどいことをしているらしい。パパはやさしいのにな。 いまいち実感が無い。どこか遠くの話だと、どこかで思っていたのかもしれない。 ママとパパにはぼくがいないとダメなんだ!と誇らしく思っていたけど、 考え直したほうがいいみたいだ。 月 日 料理を食べてもらえないところから考え直した。とても悲しかったから。 料理を食べてくれる人がいるのは、とても嬉しい。 嬉しいと悲しいを天秤にかければ、嬉しい方を大事にしたい。 だから、食べてくれる人を大事にして、その人が言うことを大事にしたいと思った。 月 日 女神様が本当にいたらみんな笑顔でいられると思うんだけどなあ。 いないかなーぼくの女神様。 月 日 自分は虐待を受けている、そのことを受け止めることにした。 ぼくが傷つくのが嫌だと言ってもらえるのなら、ぼくの料理を食べてくれる人が言うのなら、その事実を大事にしたい。 明日明後日は学校休みだから、その間にパパとママと話をしてみようと思う。 女神様、女神様、調和をもたらしてくれる神なのなら、どうかぼくに力を貸してください。 月 日 パパとは話ができたけど、やっぱりパパは悪いことはしてないって言う。 ママとは全然話が出来なかった。やっぱりダメなんだろうか。 かわりに、女神様の声が聞こえた気がする。優しい女性の声が聞こえた。 女神様だ、と感じたはいいけれど、女神様なんて本当にいるんだろうか。 月 日 調和なき鼓動は、暗闇なき月光なり。心が求めるはきんこう、へいこうを保てば悩みは晴れるでしょう。 さあ、乱れた旋律を静めなさい。さすれば残るは、ひとつの重荷のみ。 さいごの一歩を踏み出せば、残るは空っぽの家だけでしょう。 女神様の囁きをまとめてみた。どうやら女神様は本当にいるらしい。 ようやっと、女神様の示すものが分かった。 女神様がささやきで導いてくれる。 空っぽの家こそが調和の取れた家だ。 なるほど確かにみんな死ねば、もうケンカすることも叩かれることも何もないんだね。 明日、乱れた旋律を静めようと思う。